サンフランシスコ・レストランのトップシェフとその10のスピンオフ

見逃せない、高級店のカジュアルバージョン姉妹店

どうやらサンフランシスコ・ワインカントリーの、レストラン業界における最新トレンドは、『スピンオフ』のようだ。

スピンオフとは、会社の一部分/一部門を分離独立させて、別会社として経営されることを言う。ファッション業界において、デザイナーズブランドがファーストラインであるのに対して、より手の届きやすい普及版のセカンドラインを用意し、裾野を広げると共に、ブランドの価値向上/認知度向上を計っている関係と似ている。(デザイン業界におけるファーストライン – セカンドラインの例、Prada – Miu Miu、DOLCE & GABBANA – D&G 等)

spinoff-chez-panisseこの流れのスタートは、遡れば、シェ・パニーズ(Chez Panisse)から。1971年のオープン以来、メニューはフィックスのコース1つのみ($100程、税・チップ別)という形態から、1980年に上の階にカフェアット・シェパニーズ(Cafe at Chez Panisse)を開いた。カフェではアラカルトでより安価なメニューを提供している。
その次は、かのフレンチランドリー(The French Laundry)だろう。 フレンチビストロのブション(Bouchon)に続いてアドホック(Ad Hoc)をオープンしている。

spinoff-french-laundryその動きが、ここ数年で急加速し、サンフランシスコ周辺では数多くの高級レストランが、よりカジュアルなバージョンのレストランを、続々とオープンしているのだ。

そのいくつかをご紹介したいと思う。

これは行くしかない?10のレストラン・スピンオフ

スピンオフ: Monsieur Benjamin, 451 Gough Street(サンフランシスコ・ヘイズバレー)
オリジナル: Benu(ミシュラン2つ星)
2014年にオープンする予定のモダンビストロでまだ工事中ながら、フレンチランドリー出身のコリー・リーシェフの元々の名声もあって既に大きな注目を集めている。オリジナルのBenuでは、195ドル(税・チップ別)のテイスティングコースの1つしかないことを考えると、カジュアル版で彼の料理が試せるのは嬉しいニュースだ。

スピンオフ: Alta Ca, 1420 Market Street(サンフランシスコ・シビックセンター地区)
オリジナル: Coi(ミシュラン2つ星)
2013年12月にオープンしたAlta Caは、Coiのダニエル・パターソンシェフの最新のお店。彼ははAlta Ca以外にも、シェフが自宅を構えるオークランドにPlum, Plum Bar, Havenという3つのお店を持つ。Benuと同じく、Coiもミシュラン2つ星に相応しいお値段なので、カジュアル版はやはり敷居が低い。

cotogna-entスピンオフ: Cotogna, 490 Pacific Avenue(サンフランシスコ・ファイナンシャル地区)
オリジナル: Quince(ミシュラン2つ星)
サンフランシスコのトップシェフの一人、マイケル・タスク氏はオバマ大統領のシェフも務めるほどの超一流。Quinceの隣にあるCotognaは2011年のオープン以来、安定した人気を誇っている。Cotognaの詳しい記事はこちら

スピンオフ: Box & Bells, 5912 College Avenue, Oakland(オークランド)
オリジナル: Commis(ミシュラン1つ星)
オークランドで非常に美味しいカリフォルニア料理を提供している名店、コミのシェフが2013年11月に開いた店。オークランドのロックリッジという街は最近レストランのオープン続きだ。このシェフはHawker Fareという別のスピンオフも経営している。Commisの詳しい記事はこちら

spinoff-1760スピンオフ: 1760, 1760 Polk Street(サンフランシスコ・ノブヒル地区)
オリジナル: Acquerello(ミシュラン1つ星)
上写真は1760。2013年9月にオープンして以来、評判の良い1760。予約も取りづらくなってきている。本店のAcquerelloにはまだ行ったことが無いが、グルメな元上司はサンフランシスコのイタリアンでここが一番だと言っていた。1760の詳しい記事はこちら

スピンオフ: The Square, 1707 Powell Street(サンフランシスコ・ノースビーチ地区)
オリジナル: Sons & Daughters(ミシュラン1つ星)
The Squareは、ワシントンスクエアの目の前のロケーションに2014年2月にオープンしたばかり。まだオープン間もないので評価はまちまちだが、Sons & Daughtersのキッチンからスタッフを移転させているようなので、今後に期待したい。

reddwood-insideスピンオフ: Redd Wood, 6755 Washington St, Yountville(ナパバレー)
オリジナル: Redd(2013年までミシュラン1つ星)
上写真はRedd Wood。ナパの人気レストランReddのオーナーシェフが開いた、ピッツエリアがRedd Wood。Redd Woodはカッコいい店内、美味しい料理、フレンドリーなサービスと三拍子揃っていて、私がナパで最も頻繁に訪れているお気に入りレストランだ。Reddの詳しい記事はこちら、Redd Woodの詳しい記事はこちら

スピンオフ: TBD, 1077 Mission Street(サンフランシスコ・ソマ地区)
オリジナル: AQ
TBD(to be determined)というと、まだお店の名前が未定かに思えるが、TBDというお店の名前なのだ。季節に応じた内装と美しい料理で有名なレストラン”AQ”のセカンドラインで、2013年11月にオープンした。AQについての詳しい記事はこちら

スピンオフ: Barbacco, 220 California Street(サンフランシスコ・ファイナンシャル地区)
オリジナル: Perbacco
ファイナンシャルディストリクトにあるイタリアンのお店で、オリジナルとスピンオフは隣同士にある。Barbaccoは店内にテレビがあるくらいカジュアルな雰囲気で、このエリアで働く人の仕事帰りに人気のお店だ。

スピンオフ: La Nebbia, 1781 Church Street
オリジナル: La Ciccia
ノイ・バレーの小さいながら、カルト的ファンの多いサルディーニャ(イタリア西側にある島)料理店La Cicciaのオーナーが2013年12月に開いたエノテカ/生ハムバーがLa Nebbia。メニューは生ハム、チーズ、ピザ、ミートボールなどシンプルだが、グラスワインの種類が豊富で、オープン以来、早速賑わっているようだ。

いかがだろうか。機会がないとなかなか訪れない高級店、そのオーナーシェフが経営するセカンドラインは、肩肘張らずに気軽に行けるのが嬉しい。更にオーナーシェフによってクオリティが担保されているとなると、色々な場面で重宝しそうだ。