Mourad/ムラッド(モダン・モロッコ料理店)総合81点

モロッコ料理で、世界で初めてミシュランスターを獲得した有名モダン・モロッコ料理店の2号店

mourad-ent北アフリカにある国モロッコ。筆者自身はモロッコを訪れたことも、その国の人に出会ったこともないくらい、縁もゆかりもない国である。しかし、サンフランシスコには、ちょっと詳しい人であれば必ず名前を知っている、有名なモロッコ料理のレストランがある。アウターリッチモンド地区にある「Aziza(アズィザ)」だ。2001年にオープンして以来、数々のメディアで賞賛され、2010年には世界中のモロッコ料理レストランの中で、初めてミシュランスターを与えられた名店。以降、ミシュラン一つ星を獲得し続けている。

そのアズィザのオーナーシェフ Mourad Lahlou(ムラッド・ラルー)氏が2015年に新たにオープンした2号店が Mourad(ムラッド)だ。
mourad-chefオーナーシェフのムラッド氏。Photo Credit: SF Chronicle紙

ムラッド氏は異色の経歴の持ち主。20歳まで、故郷モロッコの大家族で生まれ育った。その後、経済学を勉強するためにサンフランシスコ州立大学に留学するが、そこで彼は故郷の食べ物が食べられないというホームシックに陥る。ホームシックに陥ったムラッドは、故郷の味をローカルの材料を使って再現するようになる。

ほどなくして、彼はモロカン – アメリカンシェフとしてのキャリアをスタートさせることとなる。大抵のシェフは、料理学校に通ってシェフとしての基礎を身につけ、その後レストランに就職するというのが王道。一方、彼は大学で経済学を勉強した後に、独学でキャリアをスタートさせた。

1996年に、マリン地域のサン・ラファエル市に彼の初めてのレストラン「Kasbah」をオープンする。すぐに彼の名はレストラン業界で有名になり、2001年には、よりモダンで洗練されたモロッコ料理を提供すべく、Kasbahをクローズして、アズィザをサンフランシスコにオープンした。その後の成功は先述の通り。彼自身のルーツである伝統的なモロッコ料理を、ベイエリアの優れたローカルの食材を使って、モダンに昇華させた手法とその探究心は高く評価されている。ムラッド氏は、ベイエリアで最も尊敬されているシェフの一人である。

mourad-ptbuilding-ent「ムラッド」は、オーナーシェフのムラッド氏から名前を取ったレストランで、アールデコ調の装飾が美しい、歴史あるパシフィック・テレフォンビル(上写真および下写真)の中に入居している。

mourad-ptbuildingレストランの内装も、彼のモダン料理を反映するかのような、天井が高くてモダンな内装。所々には、彼の祖国であるモロッコのタイルなどの要素がちりばめられている。

mourad-dining2015年1月にオープンしたばかりのレストランながら、同年10月のミシュランでは、即座にミシュラン一つ星を獲得。アズィザと含めて2店舗同時のミシュラン一つ星となった。

mourad-inside訪問が2時前というランチタイム終了間際だったため、店内は閑散としているが、タイミングが違えば近隣のビジネスマンで埋まっていることだろう。ランチだったので、アラカルトの一本のメニューだったが、夜には120ドル(税・チップ別)のティスティングメニューや、2名以上でのファミリースタイルメニューもある。

mourad-soupハリラ 10ドル(Harira $10)
写真は2名に取り分けされた後の一名分。調理したレンティル(レンズ豆)を乗せたお皿に、テーブルの上でスープが注がれた。スープはトマトベースで、レンティル、デーツ、セロリなどを混ぜたもの。美味しかったが、少し塩辛く、お酒が欲しい、、、という感じ。ヒース・セラミックスのお皿も可愛い。

mourad-beansビーンズ 9ドル(Beans $9)
サーバーにオススメされて頼んだ一品。上の2色になっている部分は、フェタチーズのクリームと、ザーター(za’ ater)というミックススパイスと混ぜたクッキー生地のようなクランブル。その下の層は、トマトソースとビーンズ(恐らくバタービーンズ)を混ぜたものが入っている。フェタのクリームと、ザータースパイスのクランブルがトマトソースとよく合って、美味しかった。見た目以上にどっしり量もあって食べきれないくらいだった。

mourad-basteeyaバスティヤ 21ドル(Basteeya $21)
ムラッド氏のシグネチャーディッシュで、モロッコらしい一品とこちらもサーバーにオススメされたもの。サクサクのフィロ(Phyllo: パイ生地のようにサクサクした生地)の中は、スパイスで丸一日漬け込んでからダック・ファットの中で低温調理されたダックコンフィの詰め物。詰め物の中身は、キャラメル状のオニオン、レーズンやアーモンドがミックスされており、スパイスがいっぱい効いていて、甘めの味。添えられているのは、ピクルス状の梨、ヤシの芽(白い丸い形のもの)、クレーム・フレーシュ。私にはちょっと甘すぎたが、本場のものはもっと甘く、どうやらこれは甘さ控えめらしい。

mourad-lambラム 25ドル(Lamb $25)
柔らかく調理されたラム肉のサイドには、ナス、クリスピーひよこ豆、上には松の実がトッピングされている。ソースはラムヴィネグレット。今までの料理の中では、一番馴染みがあるというか、今まで食べたことがある感じの味のお料理。美味しいがポーションが小さい割に、脂身部分が多かったのが残念だった。

mourad-kitchenモロッコ料理自体が、筆者にとってあまり馴染みのある食べ物ではなく、他に比較対象がないので何とも言い難い。しかし、確かにモダンでハイセンスで、今まで食べたことのないお料理であったり、新しい発見のあるレストランだった。多国籍な料理を、地元の新鮮な食材を使って、新たに改革するやり方は、まさにサンフランシスコのレストランならでは。

もう一度訪れるなら、次はある程度の人数(4〜6名)でモロッコのファミリースタイルのディナーを試してみたいと思った。地元紙では、「A new path to Morocco(モロッコへの新たな道)」と表現されている。
同店のペストリーシェフは、ジェームス・ビアード賞に、よくノミネートされている有名なペストリーシェフなので、次回はデザートも試してみたい。

SF BiteBite’s評価(総合81点)

味 31点(40点満点)
コストパフォーマンス 15点(20点満点)
サービス 8点(10点満点)
雰囲気 9点(10点満点)
独創性 9点(10点満点)
清潔感 9点(10点満点)

Mourad/サンフランシスコ・ファイナンシャル地区

http://mouradsf.com/
140 New Montgomery St
San Francisco, CA 94105
Phone number (415) 660-2500
Mon – Fri 11:30 am – 10:00 pm
Sat, Sun 5:00 pm – 10:00 pm
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