Tech関係者注目のフード系スタートアップ7選
フード系スタートアップに流れ込む”Tech Cash”
Blue Bottle Coffeeがテック業界のいわゆるスター達から$20M(約19億円、$1=95円)という資金調達をした際に、Wall Street Jornalに掲載された記事である。
“Tech Cash Pours Into Food Start-Ups“と題されたこの記事をもとに、テック業界関係者や興味がある方なら知っておきたい、注目のフードスタートアップのリストを用意し情報を付け加えた。シリコンバレーは近年Social Networkで世界を変えてきたように、テック業界だけでなく、次はフードインダストリーにも革命を起こそうとしているのだ。
1. Blue Bottle Coffee/ブルーボトルコーヒー
ベイエリアのヒップスターから熱い支持を得ているスペシャルティコーヒーの専門店。2012年10月に実施された$20Mの投資家の顔ぶれははっきり言って凄い。True VenturesのTony Conrad, Google Ventures, TwitterのCo-FounderのEvan Williams, Index Ventures, Instagramの創業者Kevin Systrom, WordPressの創業開発者のMatt Mullenweg, Pathの創業者Dave Morin, Diggの創業者Kevin Rose, オーガニックスーパーマーケットFresh & Wildの創業者Bryan Meehan, Flickr創業者のCaterina Fakeだ。ConradはBlue Bottleをコーヒ界のAppleと呼んでいる。Blue Bottleはカリフォルニア州オークランドを拠点とし、サンフランシスコとマンハッタンにお店を構える。コーヒー愛好家から”Third-Wave Coffee”の中心と言われているコーヒーショップだ。詳しいお店の記事はこちら。
2. Stumptown Coffee/スタンプタウンコーヒー
Blue Bottle Coffeeと同じThird-Wave Coffeeの中心。サンフランシスコではなくオレゴン州ポートランドに拠点を構えるこちらは少し毛色が違うが、プライベートエクイティのTSG Consumer Partnersが2011年に大幅な株式を取得した。TSG Consumer PartnersはVitamin Waterのバックに付いて、成功させた経歴を持つ。Blue Bottle, Stumptown共に、ブランド力に潤沢なキャッシュが付いてきている。
3. Sightglass Coffee/サイトグラスコーヒー
TwitterのCo-FounderであるJack Dorseyがサンフランシスコを拠点とした、同じくThird-WaveのSightglass Coffeeに投資している。投資内容の詳細は不明だが、同じベイエリアのBlue Bottleと比較すると後発でまだまだ小さい。詳しいお店の記事はこちら。
4. Unreal/アンリアル
全てナチュラル素材から作られているキャンディメーカー(※アメリカでキャンディというとチョコレートやキャラメルを含む)。先述のDorseyがアドバイザーを勤めている。Snickers(
スニッカーズ)、M&M’s(エム&エムズ)、HERSHEY’S(ハーシーズ)といったジャンクフードのキャンディをジャンクでなくしようとしているが、この比較表を見る限り普通のキャンディよりはましだが、まだキャンディはキャンディか。ところでこのブランド、現在CVSやTargetといった大手チェーンで販売しているが、13歳の少年がアイデアを思いつき、Digitasというデジタル広告会社を$1BでPublicisに売却した超裕福かつ各業界とのコネを持つ起業家の父親の助けによって2年後に創業したというのだからそれも驚きだ。それについてのWSJの記事はこちら。
5. Beyond Meat/ビヨンドミート
肉を使わずに肉のような食感と味を、植物のタンパク質から作るメーカー。前述のTwitter Co-FounderのEvan Williamsと同じくTwitter Co-FounderのBiz Stoneや、ベンチャーキャピタル業界のリーダーであるクライナーパーキンス(Kleiner Perkins Caufield Byers)が投資している。日本ではあまり見かけないが、サンフランシスコで生活しているとレストランではベジタリアンメニューをよく見かけ、ベジタリアン (Vegetarian:卵・乳製品OK) もしくはビーガン(Vegan:完全菜食主義者、卵・乳製品NG)の数の多さに驚く。実際にサンフランシスコのWhole Foodsでは一週間分の在庫がたった2日で売り切れた。このミズーリ大学との共同研究によって産まれた、大豆をベースとしたフェイクチキンを私も食べたことがあるが、かなりの出来だ。現在チキンのみだが、次はフェイクビーフを作ろうとしている。
6. The Melt/ザメルト
グリルチーズサンド専門のファーストフード店。フリップビデオカメラを作ったJonathan Kaplanが創業者で、フリップビデオカメラの次はグリルチーズサンドをフリップ(反転)させているとジョークになっている。事前にオンラインやモバイルでオーダーするとQRコードが与えられ、それを店頭でかざすと調理が始まり、調理の進行具合を店頭のモニターで確認出来るといったTechとの融合も進んでいる。Meltの投資家には初期のGoogle, Yahoo, Paypal, Linkedin, Zapposに投資したことで有名なSequoia CapitalのMichael Moritzが含まれており、Sequoia Capitalは中国やインドでもフード系スタートアップに投資しているようだ。
7. Dandelion Chocolate/ダンデライオンチョコレート
アドレス帳マネジメントサイト”Plaxo”の創業者Todd Masonisが作ったサンフランシスコ拠点のチョコレートメーカー。シリコンバレーのスタートアップらしく、彼はガレージで2年間製法のテストを行い、自己資金$1Mと家族や友人から30万ドルを資金調達してのスタートだった。詳しいお店の記事はこちら。
Tech系スタートアップとは逆の動き
食はあまりにも工業化されており、その反動としてこういったスタートアップが登場、今まで隠れていた表面をめくって新しい領域を開拓している。テック業界関係者にとって自分の得意分野でない食産業に投資することはしばしば趣味や失敗と見なされてきた。実際に前述のDiggの創業者で現Google VenturesパートナーのKevin Roseはブルーボトルに投資する際、数字をしっかり見なかったようだが、後にファイナンシャルをきちんと見たら、嬉しいサプライズだったという。
シリコンバレーのハイテクカンパニーの素早い動きと逆にブルーボトルコーヒーのドリップコーヒーはスローだ。注文を受けるたびに豆を挽き、フィルターを通してゆっくり・丁寧にカップに注がれる。規模拡大を最も重視するTech業界のスタートアップと違ってブルーボトルは規模拡大を先行させたことはない。豆は焙煎してから48時間以内のものしか使わないため、焙煎所が店舗のそばになければならないといった制限が自然とかかる。
WSJの記事の締めくくりはこの言葉 ”Sometimes we need to slow down.”
上記の7つのうち、スタンプタウンを除いて全てサンフランシスコで体験もしくは購入できるので是非試してみて頂きたい。(正確に言うとスタンプタウンは直営店舗は無いが、ホールセールのパートナーならあるので全てあると言えばある。)