Chez Panisse Cafe/シェ・パニース・カフェ(カリフォルニア料理)総合83点
アメリカのレストラン史に名を残すレストラン
カリフォルニア料理のパイオニアとして、あまりにも有名なレストラン、シェ・パニース(Chez Panisse)。恐らく、このエリアを旅行で訪れる人や住んでいる人にとって、一度は訪れてみたいレストランなのではないか。
オーナーであるアリス・ウォーターズ(Alice Waters)氏は、地元産・オーガニックの旬な食材を使い、『その日に仕入れた素材の持つ美味しさを生かし、その日のメニューを決める』という、一見当たり前のようで、実に難しいことを今から43年も前にやってのけた人物だ。彼女は、彼女と考えを同じくする地元の優良農家と仕入れネットワークを構築し、ローカル・オーガニックで且つ、サステイナブル(持続可能)な食材を使うことを強く提唱。現在に至るまで、彼女の功績により数多くのサンフランシスコ・ベイエリアのレストランではこの精神が受け継がれている。これも彼女の影響なのかは分からないが、この界隈には健康志向・オーガニック志向のグルメな人々がわんさかいることも事実だ。
シェ・パニースの評価は世界的にも非常に高く、2002年から2008年には世界のトップレストラン50に選ばれており、2007年にアリス・ウォーターズ氏は過去50年で最もアメリカ料理に影響を与えたと讃えられている。ただ、ミシュランに関しては2011年に星を失って以来、獲得出来ておらず、再度獲得するかが注目されている。
驚くべきことは、シェ・パニースがオープンしたのは1971年、カフェがオープンしたのが1980年なのだが、40年以上経った今でも、いずれのお店も最も予約の取りにくい店であり続けていることだ。レストラン予約サイトのOpen Table上でも予約は受付しているが、常に空席がない状態が続いているので、予約の受付を開始する1ヶ月前の朝9時に電話で予約する方法が一番確実だろう。 上写真はカフェの店内だが、昔からあるレストランだけあって年齢層はやや高め。
レストランの場所はサンフランシスコからベイブリッジを渡って車で20分〜30分程、北東に行った先にあるバークレーという学園都市にある。古い家屋を改装した一軒家のような建物で、入り口は木々の緑で覆われている。
レストランに入って直ぐに飾られているお花。今回訪れたのは、シェ・パニースのスピンオフレストランとして、同レストランの2階に位置する、シェ・パニース・カフェ。1階のメニューは、毎日中身が変わるフィックスのコース1つのみ(100ドル強)なのに対して、2階では、アラカルトで手の届きやすい値段設定となっている。
カフェといっても1階と同じく、メニューの中身は毎日変わり、食材へのこだわり精神はそのままだ。1階のレストランと2階のカフェでは、それぞれ別々のオープンキッチンを持つ。このオープンキッチンはかなり横に長いデザインで、調理器具も清潔感が漂う。オープンキッチンと言いつつ奥は見えなくなっているレストランとは一線を画している。
キッチンの横を通ると、ふわっと良い香りが漂い、その日の食材(かなり大きなそら豆だった)がスポットライトを浴びている。
赤ワイン 8ドル(2012 Chez panisse zinfandel, green & red vineyards, napa valley $8)
ジンファンデルが美味しいことで有名なナパのgreen & red vineyardsのものを、シェ・パニースのハウスワインとして提供しているようだ。クラシックな味のジンファンデルで美味しい。細かな話だが、1階のレストランと2階のカフェでは使っているワイングラスが違う。もちろん1階ではよりエレガントなグラスとなっている。
ウサギのタルタルサラダ 13ドル(Tonno di coniglio $13)
さすが、素材に最も重点を置いているシェ・パニースだけあって、サラダに入っている野菜が生き生きしていて、色も健康的で鮮やかだ。ドレッシングはシンプルなヴィネクレットで、素材の味を引き立てている。サイドには、ウサギのコンフィ(低温のオイル煮)とオリーブの実、バジルを細かく刻んでミックスし、バケットの上に乗せたもの。コンフィもいい具合の塩加減で美味しい。
ゴーダチーズサラダ 11ドル(Baked andante goat cheese with garden lettuce $11)
バークレーから北に45分程車で行った先にある、ペタルマという酪農とチーズ作りで有名な街のandanteというファームの、酸味が特徴の柔らかいゴーダチーズを焼いたものに、色鮮やかなレタス。焼いたゴーダチーズはまだ熱いままの状態でテーブルに運ばれた。ちょっとレタスの量が少ないかな。
甲殻類のシチュー 27ドル(Provencal Shellfish stew $27)
このお料理は平たく言うとパエリアからライスを取ったものと思って頂けると分かりやすい。サフランとトマトベースのスープに、大振りの海老・ハマグリ・アサリ等をたっぷり使い、薪を使ったオーブンで焼いたもの。バケットの上に乗っている、ガーリックのきいたアイオリソースと合わせても美味しかったが、今回注文したものの中では一番創意工夫に欠けていた。
ラム肩肉の蒸し煮 25ドル(Elliott ranch lamb shoulder $25)
ラムの臭みが苦手な私だが、これは全く匂いがせず、ラムと言われていなければ牛と勘違いするくらい。ローズマリーとロゼワインを使って、非常に柔らかく煮込まれている。キッチンにも飾られていたそら豆、にんじん、パースニップ(にんじんに似た白い根菜)のピューレが添えられている。このピューレがほんのり甘くて、肉と合わせるととても美味しかった。
ルバーブのガレット 10ドル(Rhubarb galette with vanilla ice cream $10)
ルバーブの美味しい季節なので、最近どのレストランに行ってもルバーブメニューを見かけるようになった。平たくて大きめのガレット生地の上にルバーブのコンポートがたっぷり。生地の一番外側の部分がとってもクランチーで美味しい。
はちみつヨーグルトのパフェ 10ドル(Honey-yogurt parfait $10)
固めたメレンゲの上に、はちみつヨーグルトのアイスクリームを乗せ、キャンディ状にしたバラの花びらを散らしたもの。美味しいが、パフェというより、実質1スクープのアイスクリームだけと考えると、このデザートはちょっと高いかなという印象。
デザートワイン 9ドル(2011 Moscato D’asti, biancospino, la spinetta, Italy $9)
デザートには、ヨーグルトパフェに合うものをとリクエストしたところ、こちらを持って来てくれた。このデザートワイン、匂いが凄くてびっくりした。バラの香りが鼻いっぱいに広がるような、華やかで甘い香りがする。でも味はそこまで甘くないところも好印象。
お会計では、17%のチップが自動的に加算されていた。20%のチップが標準化しているサンフランシスコ界隈においては、かえって良心的なチップ設定だ。サービスの人はよく気がつくし、カフェと言いつつ、入り口では黒服の紳士が出迎えてくれる。料理はこれといった目新しさは無く、若干ポーションも少ないが、素材の良さと正統派の味付けで、どんな年齢層の人であってもこのお店が嫌いという人はまず居ないだろう。
いい店というのはこういう店のことを言うのだなと改めて感じられるレストランだった。
帰りがけにキッチンを通った際に見えた生ゴミの処理。綺麗に分別されたゴミは堆肥に使うのだろうか。こういうところがこのレストランを、今なお色あせること無くサステイナブルにしているのだと思う。
このシェ・パニース・スピリッツを受け継いだ、シェ・パニースのシェフ出身のお店がベイエリアには多数ある(Pizzaiolo / boot and shoe service, Ramen Shop, Ici, Acme Bread, etc….)ので、それらを訪れるのも楽しいかもしれない。また、サウサリート発の陶器ブランド、ヒースセラミックスにあるシェ・パニース・コレクションのラインも格好良いので要チェックだ。1階のレストランも機会があれば、別途レポートしたいと思う。
SF BiteBite’s評価(総合83点)
味 33点(40点満点)
コストパフォーマンス 16点(20点満点)
サービス 9点(10点満点)
雰囲気 8点(10点満点)
独創性 8点(10点満点)
清潔感 9点(10点満点)
Chez Panisse Cafe(バークレー)
http://www.chezpanisse.com/menus/cafe-menu/
1517 Shattuck Ave
Berkeley, CA 94709
(510) 548-5049
Mon – Thu 11:30 am – 3:00 pm, 5:00 pm – 10:30 pm
Fri, Sat 11:30 am – 3:30 pm, 5:00 pm – 11:30 pm
Sun Closed
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