Bourbon & Branch/バーボン&ブランチ(バー)
アメリカ禁酒法時代の、秘密のバー体験はいかが?
この何の看板もない扉の奥が秘密の世界になっている。
禁酒法といって、アメリカでは1920年〜1933年の間、消費のためのアルコールの製造、販売、運搬をすることが全面的に禁止された法律が施行されていた。
だが、この禁酒法時代に実際にアメリカで酒が販売されていなかったかというとそうではなくて、酒を禁止したことによりかえって密造や密輸が増え、酒をめぐる犯罪も増えたという結果となった。アルカトラズ島に行かれたことがある方は、禁酒法時代に闇取引で酒を密輸・販売して大儲けをしていた、シカゴのギャングのボスとして有名な『アル・カポネ』といった囚人達が収容されていたと説明されたのを覚えているかもしれない。
実際に、ニューヨーク市単独でも、禁酒法が施行される前にはバーが約1万5千軒あったのだが、禁酒法時代にはそれが3万〜5万軒にも膨れ上がり、違法な酒場が至るところにあったそうだ。そんな『もぐりの酒場(Speakeasy)』体験を合法に出来るのが、このお店『バーボン&ブランチ』だ。実際にこのバーボン&ブランチがある場所は1921〜1933年に違法な酒場として営業していた場所をそのまま使っている。
お店に入るには、まずオンラインでの予約が必要。入り口横のベルを鳴らすと女の人が出てきて、予約名とシークレット・パスワードを聞かれる。予約名と一致したパスワードが言えれば見事入店というわけだ。また、数組が入り口の前で待っていたが、予約名とパスワードを一組確認したら一旦扉を閉めてしまって他の人は入れないという徹底ぶり。
当時のこういった無許可の隠れバーはその存在を隠すため、本来の客かどうかを選別するべく、入店には合言葉が必要だったのだろう。事前にメールで送られてきていたパスワードを言って入店完了。その後、隠し扉の奥の部屋(大人数だったため貸切)に通された。
なお、このお店の店内は写真撮影が禁止されている。撮影できないことはなかったが、ここは禁酒法時代のもぐりバー。写真を撮ることはもちろん携帯も使用禁止。マナーとして撮影はしなかったので今回残念ながら写真は掲載できない。それ以外にもこのお店のルールがホームページに書かれているのだが、なかなか面白く、時に面倒くさい内容も含まれている。
部屋は窓も何もない薄暗い部屋で、アンティーク調の家具が置かれている。年期が入った木のカウンターや、ライト、本棚など、まるで昔にタイムスリップしたかのような感覚にさせてくれる。バーカウンターではしっかりとネクタイをした正装のバーテンダーがカクテルを作ってくれる。なぜカクテルかというと、禁酒法時代には、アルコールの見た目をごまかす、質の悪いアルコールの味をごまかす、隣国のカナダやメキシコからテキーラやラムが密輸されたことによりリキュールの種類が増えた、といった理由により、アルコールにジュースやシロップを混ぜるカクテル文化が発達したのだそう。
バーボン&ブランチではだいたい1杯11ドルで、好みを言えばなんでも対応可能。3〜4杯飲んだのだが、どれもとても美味しく、バーテンダーは知識豊富で色々とアドバイスしてくれた。狭いお店ながら、ウィスキー、バーボン、ラム酒、テキーラの品揃えはかなりのもので、プレミアムなものもかなり置いているようだ。カクテルに入れるジュースや果物のピューレなどはマーケットから仕入れたフレッシュなものを手作りしている。カクテルのレベル的にはバー・アグリコルやトリック・ドッグと同じくらいだろう。こういったレアな禁酒法体験ということを抜きにしても、また行きたいと思うバーだった。
部屋を出る時は、これまた外へ続く隠し扉があって、そこから外に出られるようになっていた。
健康的な時間帯に閉店するお店が多いサンフランシスコにおいて、深夜2時まで毎日営業しているというのもこのお店のポイント。貴重な禁酒法時代の経験が出来て、かつハイレベルな美味しいドリンクが飲める楽しいバーだった。なお、このお店は看板がないので、このAnti Saloon Leagueというサインが目印となる。写真なし、フードも無しなので評価は対象外とした。
Bourbon & Branch(テンダーロイン地区)
http://www.bourbonandbranch.com/
501 Jones St
San Francisco, CA 94102
Phone number (415) 346-1735
Everyday 6:00 pm – 2:00 am